ミズノ フヅキ   Mizuno Fuzuki
  水野 文月
   所属   東邦大学  医学部 医学科
   職種   講師
言語種別 日本語
発表タイトル 次世代シーケンサを用いたゲノム分析:劣化DNA試料からの「形質モンタージュ」作成に向けての展望
会議名 第100次日本法医学会学術全国集会
学会区分 国内学会
発表形式 口頭
講演区分 一般
発表者・共同発表者◎水野文月, 石谷孔司, 植田信太郎, 王瀝, 林美千子, 髙橋雅典, 寺田賢, 長谷川智華, 山田孝, 黒崎久仁彦
発表年月日 2016/06/16
開催地
(都市, 国名)
東京
学会抄録 日本法医学会雑誌 70(1),71-71 2016
概要 化学修飾を受けて100塩基長程度までに断片化された劣化DNA試料では、事実上STRによる多型解析は困難である。我々は、従来のPCR法をベースとした分析では困難な法医試料におけるDNA鑑定を可能にすることを目的として、次世代シーケンサを用いた分析方法の開発に取り組んだ。次世代シーケンサは、ゲノムワイドに数10塩基長以上の短いDNA断片の塩基配列を決定することに長けており、一塩基多型(SNP)に関する情報を大規模に得ることができる。方法の開発にあたっては、遺跡から出土した古人骨をテスト試料とした。温帯地域の土壌から出土する古人骨には断片化したDNAが極めて微量しか残っていない上に、抽出DNAの99.9%以上は骨に侵入した土壌菌由来であるなど、効率的な分析は容易でない。今回我々は、東アジアから出土した2000〜3000年前の古人骨試料を用いて検討を重ねた結果、様々な試行錯誤を経て、ミトコンドリアゲノム全塩基配列は言うに及ばず、髪や瞳の色、耳垢などの形質や、生活習慣病の疾患と関連するSNP情報など、対象個体のルーツに関する情報を超えて複数の遺伝的形質に関する情報を得ることに成功した。SNPに基づく集団の遺伝的多様性情報が蓄積されつつある現在、近い将来には個体の由来に関するより詳細な情報を得ることが期待できる。即ち、今後の個人識別は、従来のSTR多型解析からSNP情報解析への移行が可能となろう。今回我々が開発した方法を応用することにより、非常に劣化した微量の検体など、法医試料のDNA分析においても、該当者が判明している場合の照合だけでなく、まったく手がかりがない場合の推定、つまりゲノム情報からの「形質モンタージュ」の作成が可能になるものと期待している。