オバラ ケイスケ   Obara Keisuke
  小原 圭将
   所属   東邦大学  薬学部 薬学科
   職種   准教授
言語種別 日本語
発表タイトル ジスチグミン臭化物による長時間持続性膀胱運動増強効果の機序に関する検討-リコンビナントヒトアセチルコリンエステラーゼに対する効果について-
会議名 生体機能と創薬シンポジウム2015
主催者 公益社団法人日本薬学会薬理系薬学部会, 武田弘志教授(国際医療福祉大学薬学部)
学会区分 国内学会
発表形式 ポスター掲示
講演区分 一般
発表者・共同発表者◎小原圭将†, 茅野大介†, 田中芳夫†
発表年月日 2015/08/27
開催地
(都市, 国名)
日本大学薬学部(船橋市, 千葉県)
概要 【目的】ジスチグミン臭化物(Dis)は可逆的アセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害薬で、重症筋無力症や緑内障のほか、低活動膀胱(低緊張性膀胱による排尿困難)の治療に使用されている。Disは可逆的AChE阻害薬であるが、他のAChE阻害薬と比較するとその治療効果は極めて長時間に亘って持続するとされている。しかし、その実験的根拠はそれほど明確に示されているわけでなく、長時間持続する理由もよく分かっていないのが現状である。我々は、この疑問点を明らかにすることを目的として、モルモットの膀胱運動に与える増強効果を指標にしてDisの作用持続性を検証し、これまでに以下の知見を得ている。1)Dis(10-6 M)はAChの単回投与によるモルモット摘出排尿筋標本の収縮反応を顕著に増強し、その増強効果は標本を洗滌した後も12時間に亘り有意に持続していた。2)Dis(0.03 mg/kg)は、麻酔下でシストメトリー法により記録されるモルモットの膀胱運動波形の排尿時最大膀胱内圧(IVPmax)を著明に増強するとともに、血中AChE活性、膀胱AChE活性のいずれも有意に阻害し、これらの効果はDisの血漿中濃度が99%以上低下した後も持続したままであった。以上の実験結果は、DisがAChE自身に強固に結合して解離しにくくなることがDisの長時間に亘る作用持続性を説明する理由のひとつである可能性を示唆するものである。本研究では、この仮説の妥当性を検証する目的で、ヒトAChEに対するDisの酵素活性阻害効果の持続性を検討した。
【方法】リコンビナントヒトAChEをDis及びピリドスチグミン(Pyr)で処置した後に十分に洗滌し、酵素活性の経時変化を48時間に亘り測定した。酵素の洗滌は、限外ろ過膜を用いた遠心ろ過操作(25℃, 5000×g, 5 min)により行った。酵素活性の測定はDTNB法に従い、反応液の410 nmでの吸光度を測定した。
【結果】Pyr(10-6 M)、Dis(10-6 M)のいずれもリコンビナントヒトAChEの活性を有意に阻害したが、Pyr(10-6 M)の阻害効果は洗滌後6時間以内には消失した。これに対して、Dis(10-6 M)は、リコンビナントヒトAChEの活性を、酵素の洗滌後も48時間に亘り有意に阻害し続けた。また、Disの解離速度定数は、0.0119 ± 0.0009 h-1 と算出され、Pyrの解離速度定数に比べ小さな値であった。