タナカ ヨシオ
Tanaka Yoshio
田中 芳夫 所属 東邦大学 薬学部 薬学科 職種 教授 |
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言語種別 | 日本語 |
発表タイトル | TXA2安定誘導体の持続性血管収縮に対する多価不飽和脂肪酸の抑制効果の比較 |
会議名 | 第52回日本平滑筋学会総会 |
学会区分 | 国内学会 |
発表形式 | ポスター掲示 |
発表者・共同発表者 | ◎佐藤恭輔†, 重松舞衣†, 柴田さゆり†, 通川広美†, 田中芳夫† |
発表年月日 | 2010/07/01 |
開催地 (都市, 国名) |
仙台市 |
学会抄録 | 日本平滑筋学会雑誌 14(1),J-32 2010 |
概要 | 【目的】ドコサヘキサエン酸(DHA)は、ω-3系多価不飽和脂肪酸の一つである。DHAは血小板凝集抑制作用をもつため、循環機能に対して保護的に作用すると考えられているが、血管の収縮機能に対する影響を検討した研究は意外と少ない。我々は、以前、DHAの血管に対する作用を検討する過程で、DHAがモルモット胸部大動脈において、U-46619(TXA2安定誘導体)の持続性収縮を強力に抑制することを見出している。本研究では、ラット大動脈で検討することにより、DHAによる収縮抑制効果をさらに検証することにした。また、DHAと同様ω-3系多価不飽和脂肪酸に分類されるエイコサペンタエン酸(EPA)や、ω-6系不飽和脂肪酸(arachidonic acid; AA、linoleic acid; LA)の効果についても併せて検討した。
【方法】内皮を除去したラット胸部大動脈リング標本(幅2 mm)を実験に供した。U-46619による持続性収縮が得られた後、DHAをはじめとする各種多価不飽和脂肪酸(EPA、AA、LA)を投与し、その影響を等尺性に記録した。また、DHAの抑制作用に関する刺激依存性を吟味するために、phenylephrine(Phe)やHigh-K、PGF2αによる収縮に対する影響も検討した。 【結果】① DHA(10-6 - 10-5 M)は、U-46619による収縮のほか、PGF2α(3×10-7 - 10-5 M)による持続性収縮に対しても強い抑制を示した。しかし、Phe(10-8 - 3×10-7 M)やHigh-K(20 - 80 mM)による持続性収縮に対してはほとんど抑制を示さなかった。② U-46619による持続性収縮に対する抑制効果は、DHAよりも多少弱いものの、同濃度のEPAによってももたらされた。③ω-6系不飽和脂肪酸のうち、AAもU-46619による持続性収縮をDHAと同程度に抑制した。しかし、LAでは、10-4 Mによってもほとんど抑制作用を示すことはなかった。 【考察】DHAは、モルモットだけではなくラットにおいても、エイコサノイドが引き起こす強力な血管収縮を顕著に抑制することが明らかとなり、この抑制効果が本不飽和脂肪酸によりもたらされる循環保護効果の一端を担う可能性が示された。ただし、U-46619による持続性収縮に対する抑制がEPAのみならずAAによってももたらされたことから、DHAによる抑制効果がω-3系に特異的に認められるものか否かに関してはさらに慎重な検討が必要であると考えられた。 |