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 理学部 物理学科 基礎物理学教室
 Fundamental Physics Laboratory

教授:
  小川 了
  渋谷 寛
■ 概要
ニュートリノ振動の研究(OPERA)
国際協力実験OPERAはニュートリノ振動の結果出現した異種ニュートリノを検出してこの現象の確認に決着をつけることを目指している。欧州原子核研究機構(CERN)から発射されたミューニュートリノビーム中にタウニュートリノが出現することを約730km離れたグランサッソ地下研究所で観測する。タウニュートリノ反応はタウレプトンの特徴的な崩壊を高分解能の原子核乾板(エマルションフィルム)で観測して識別する。標的質量1250トンの実験装置は原子核乾板・鉛板を積層したECC検出器と電気信号検出器を組み合わせて製作,建設されたものである。本格的な照射実験は2008年から2012年までの5年間で、合計19,505個のニュートリノ反応が標的中に記録された。このニュートリノ反応の測定も並行して進められ,すでに6600例を超えるニュートリノ反応が解析された。その中から5例のタウニュートリノ反応候補が検出されている。この5例を全てニュートリノ振動以外の原因(背景事象)で説明できる確率は約1×10のマイナス7乗でニュートリノ振動からのタウニュートリノ出現を発見したと言える段階(5.1シグマ)に達した。
Kビームによるダブルハイパー核とH粒子の研究 (KEK E373,J-PARC E07)
KEK-PSのKビームをエマルション・ハイブリッド実験装置に打ち込み,準自由反応Kp→KΞにより生成されたΞ粒子をエマルション中で静止吸収させ,その結果生成されるS=-2 原子核を観測し,詳細に解析する。この手法で世界初の確実なダブルハイパー核の観測に成功したE176実験に続き,検出器を改良したE373実験も本格的な解析が終了した。ラムファと同定されたNAGARA事象を含む4つのダブルハイパー核崩壊事象が観測されている。さらに,大強度陽子加速器施設(J-PARC)でもその特長を生かしたE07実験を準備中である。E07実験に向けて従来のハイブリッド手法に加えて、全面探査法の開発にも着手した。K-ビームを打ち込み、Ξ-粒子静止吸収事象も多数蓄積されている乳剤層の内部情報を3次元的に全面にわたって取り込む手法でこれまで検出されていなかったハイパー核候補やハンマートラックなどの事象が多数観測されている。
B-ファクトリーにおけるCP対称性の破れの研究(KEK Belle)
B-ファクトリーは高エネルギー加速器研究機構(KEK)において8.0GeVの電子と3.5GeV の陽電子を衝突させることによりボトム・クォーク対を大量に生成し,「CPの破れ」の起源を探る計画である。本研究室は粒子同定装置の開発を他の研究機関と共同で推進し,実際にBelle検出器内部に設置した。2001年7月のB中間子における間接的CP非保存の発見,2003年度には直接的CP非保存の発見,数種類以上の新粒子の発見が報告され,豊富な物理を提供している。KEKでは,Belle実験の更なる高輝度実験であるBelleII実験に向けて,Belle検出器のアップグレードを計画している。粒子同定装置では,端管部を従来の閾値型エアロゲル検出器から、輻射体にエアロゲルを用いたリングイメージチェレンコフ検出器へのアップグレードを計画しており,本研究室も検出器要素の開発に参加している。本研究室では,特に,チェレンコフリングの検出に用いるため,2次元に多チャンネル化した,アバランシェフォトダイオード(APD)を組み込んだ,ハイブリッド型の光電子増倍管(HAPD)の開発に取り組んでいる。2013年度は、APDの膜構造を最適化することにより、放射線、中でもガンマ線を照射したときに生じるAPDのブレークダウンを抑制出来ることが分かり、放射線耐性を持つHAPDの量産に目途がついた。
全天監視宇宙線望遠鏡による高エネルギー宇宙線の観測実験(Ashra)
Ashraは全天を覆う視野を持ち,イメージインテンシファイアを用いた高精度広視野光電撮像系を持つ望遠鏡ステーション3基を米国ハワイ島に建設し,光学閃光観測,TeV領域のガンマ線,高エネルギー核子,および高エネルギーニュ-トリノの同時観測が可能な宇宙線望遠鏡である。2005年7月にハワイ島のマウナロア山頂のAshra観測地に対してハワイ州から土地の利用許可が下り,ステーションの建設を開始した。2007年度夏に大規模な集中建設を行い,27機の集光器を収めるシェルターがサイトに完成した。2008年6月より物理観測を開始した。2008年12月には、GRB天体からの閃光観測と地球かすりニュートリノ観測の同時が実現した。2012年1月から2013年3月まで第3期観測を行い1950時間のトリガー観測データを取得した。
磁場印加型エマルション検出器の基礎研究
将来のニュートリノ振動実験ではニュートリノ反応と反ニュートリノ反応の識別が重要で,その実現のため有望視されている検出器候補の一つが磁場印加型エマルション検出器である。その基礎研究として各種のビーム照射実験を行っている。2009年度はCERN 陽子シンクロトロン(PS)において2種類の磁場印加型エマルション検出器にπ ビームと電子ビームを照射し,10 GeV/cにおいても十分な運動量測定精度・電荷識別能力が得られることがわかった。一方,エマルション検出器製作上の課題、フィルムの固定が不十分という問題も明らかになった。そこで、圧力センサー装着した検出器を製作し、宇宙線照射実験を行った。その結果、フィルム固定に適した圧力を見出すことができた。2012年度にはバネを用いたエマルション検出器を製作してCERNの2次ハドロンビームを照射し、フィルムのズレがなく、平面性を保つ方法を研究した。隠れた粒子を探索し、同時にタウニュートリノ反応を詳細に研究する将来計画が提案され、コンパクトな磁場印加型エマルション検出器が有力な構成要素となった。この実験に向けて開発を加速する必要がある。
■ Keywords
素粒子実験, ニュートリノ, B-ファクトリー, ダブルハイパー核, 高エネルギー宇宙線, エマルション, 原子核乾板
■ 当該年度研究業績数一覧表
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表
和文英文 和文英文 国内国際
















小川 了   教授
    4          
 19
 
 
 
 
渋谷 寛   教授
    4          
 19
 
 
 
 
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(  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会
■ 刊行論文
原著
1. N. Agafonova, T. Fukuda, T. Matsuo, S. Mikado, S. Ogawa, H. Shibuya et al.
(The OPERA collaboration):  Limits on muon-neutrino to tau-neutrino oscillations induced by a sterile neutrino state obtained by OPERA at the CNGS beam.  Journal of High Energy Physics  06 (069) :0 -12 , 2015
2. N. Agafonova, T. Fukuda, T. Matsuo, S. Mikado, S. Ogawa, H. Shibuya et al.
(OPERA collaboration):  Discovery of τ Neutrino Appearance in the CNGS Neutrino Beam with the OPERA Experiment.  Physical Review Letters  115 (121802) :1 -7 , 2015
3. S. Aoki, T. Fukuda, N. Kitagawa, M. Komatsu, T. Matsuo, S. Mikado, N. Naganawa, M. Nakamura, Y. Nakatsuka, S. Ogawa, O. Sato, and H. Shibuya:  A Test Experiment to Develop a Neutrino Detector with Emulsions for Neutrino-Nucleus Cross Section Measurements at J-PARC.  Proceedings of the 2nd International Symposium on Science at J-PARC -Unlocking the Mysteries of Life, Matter and the Universe-  8 (023004) :1 -6 , 2015
4. Tomokazu Matsuo, Hiroshi Shibuya, Satoru Ogawa, Tsutomu Fukuda, Shoji Mikado:  Large angle tracking and high discriminating tracking in nuclear emulsion.  Radiation Measurements  83 :41 -42 , 2015
■ 学会発表
国内学会
1. 会田勇一、青木利文、P. Binder, J. Goldman, J. Hamilton, 木村孝之、久世宏明、J. Learned,
松野茂信、◎大島仁、小川了、佐々木真人、渋谷寛、杉山直、渡邊康志: Ashra-1 第4期観測に向けた準備状況.  日本物理学会 第71回年次大会,  東北学院大学泉キャンパス(仙台市),  2016/03
2. ◎小松雅宏、中村光廣、佐藤修、中野敏行、宮西基明、森島邦博、長縄直崇、中竜大、六條宏紀、北川暢子、児玉康一、渋谷寛、小川了、青木茂樹、高橋覚、三角尚治: SHiP実験計画におけるニュートリノ物理.  日本物理学会 第71回年次大会,  東北学院大学泉キャンパス(仙台市),  2016/03
3. ◎水沢萌、渋谷寛、小川了、福田努、松尾友和、大久保岬、森元祐介、大島仁、岡田悠久、西村秋哉、鈴木平、石田拓運、他 OPERA Collaboration: OPERA実験でのバックグラウンドとなるハドロン反応の研究.  日本物理学会 第71回年次大会,  東北学院大学泉キャンパス(仙台市),  2016/03
4. ◎早川友博、渋谷寛、小川了、福田努、松尾友和、水沢萌、大久保岬、岡田悠久、三角尚治、
他 OPERA Collaboration: ニュートリノ振動実験OPERA実験における飛跡読取装置HTSを用いた検出効率評価およびΔm232測定.  日本物理学会 第71回年次大会,  東北学院大学泉キャンパス(仙台市),  2016/03
5. ◎佐藤修、中野敏行、中竜大、木村充宏、北川暢子、吉本雅浩、待井翔吾、渋谷寛、小川了、福田努、森元祐介: 原子核乾板によるニュートリノコヒーレント散乱初観測実現に向けた研究開発-2.  日本物理学会 第71回年次大会,  東北学院大学泉キャンパス(仙台市),  2016/03
6. ◎山田恭平、青木茂樹、高橋覚、呉坪健司、丸嶋利嗣、松本明佳、渋谷寛、小川了、福田努、松尾友和、森元祐介、大島仁、庵祥太、稲生恒明、水沢萌、岡田悠久、黒尾奈未、佐藤陽一、三角尚治、中村光廣 他 J-PARC T60 Collaboration: J-PARC T60 実験:スケールアップに向けた大型多段シフターの導入.  日本物理学会 第71回年次大会,  東北学院大学泉キャンパス(仙台市),  2016/03
7. ◎松尾友和、渋谷寛、小川了、福田努、森元祐介、大島仁、庵祥太、稲生恒明、水沢萌、岡田悠久、黒尾奈未、佐藤陽一、三角尚治、青木茂樹、高橋覚、山田恭平、呉坪健司、丸嶋利嗣、松本明佳、中村光廣 他 J-PARC T60 Collaboration: J-PARC T60 実験:原子核乾板を用いた水標的検出器の解析.  日本物理学会 第71回年次大会,  東北学院大学泉キャンパス(仙台市),  2016/03
8. ◎森元祐介、渋谷寛、小川了、福田努、松尾友和、大島仁、庵祥太、稲生恒明、水沢萌、岡田悠久、黒尾奈未、佐藤陽一、三角尚治、青木茂樹、高橋覚、山田恭平、呉坪健司、丸嶋利嗣、松本明佳、中村光廣 他 J-PARC T60 Collaboration: J-PARCにおける原子核乾板を用いたニュートリノビーム照射実験T60 extension の準備状況.  日本物理学会 第71回年次大会,  東北学院大学泉キャンパス(仙台市),  2016/03
9. ◎福田努、渋谷寛、小川了、松尾友和、森元祐介、松本拓也、大島仁、庵祥太、稲生恒明、水沢萌 他 J-PARC T60 Collaboration: J-PARC T60 実験:J-PARCでの原子核乾板を用いたニュートリノビーム照射実験.  日本物理学会 第71回年次大会,  東北学院大学泉キャンパス(仙台市),  2016/03
10. ◎佐々木真人、小川了、大島仁、渋谷寛 他 Ashra Collaboration: Ashra-1 全体報告.  日本物理学会 2015年秋季大会,  大阪市立大学杉本キャンパス(大阪市),  2015/09
11. ◎大島仁、小川了、渋谷寛 他 Ashra Collaboration: Ashra-1 第4期観測に向けた準備状況.  日本物理学会 2015年秋季大会,  大阪市立大学杉本キャンパス(大阪市),  2015/09
12. ◎山田恭平、渋谷寛、小川了、福田努、松尾友和、森元祐介、松本拓也、大島仁、稲生恒明、水沢萌 他 J-PARC T60 Collaboration: J-PARC T60 実験:時間分解原子核乾板多段シフターの解析状況.  日本物理学会 2015年秋季大会,  大阪市立大学杉本キャンパス(大阪市),  2015/09
13. ◎森元祐介、渋谷寛、小川了、福田努、松尾友和、松本拓也、大島仁、稲生恒明、水沢萌 他 J-PARC T60 Collaboration: J-PARCにおける原子核乾板を用いた次期ニュートリノビーム照射実験の準備状況.  日本物理学会 2015年秋季大会,  大阪市立大学杉本キャンパス(大阪市),  2015/09
14. 福田努、渋谷寛、小川了、松尾友和、森元祐介、松本拓也、大島仁、稲生恒明、水沢萌 他 J-PARC T60 Collaboration: J-PARC T60 実験:J-PARCでの原子核乾板を用いたニュートリノビーム照射実験.  日本物理学会 2015年秋季大会,  大阪市立大学杉本キャンパス(大阪市),  2015/09
15. ◎佐藤修、渋谷寛、小川了、福田努、松尾友和、西村秋哉、松本拓也 他 OPERA Collaboration: ニュートリノ振動実験OPERA実験の現状報告.  日本物理学会 2015年秋季大会,  大阪市立大学杉本キャンパス(大阪市),  2015/09
16. ◎佐藤修、中野敏行、中竜大、北川暢子、吉本雅浩、待井翔吾、渋谷寛、小川了、福田努、森元祐介: 原子核乾板によるニュートリノコヒーレント散乱初観測実現に向けた研究開発.  日本物理学会 2015年秋季大会,  大阪市立大学杉本キャンパス(大阪市),  2015/09
17. ◎小松雅宏、中村光廣、佐藤修、中野敏行、宮西基明、森島邦博、長縄直崇、中竜大、六條宏紀、北川暢子、児玉康一、渋谷寛、小川了、青木茂樹、高橋覚、三角尚治: SHiP実験計画におけるニュートリノ物理.  日本物理学会 2015年秋季大会,  大阪市立大学杉本キャンパス(大阪市),  2015/09
18. ◎松尾友和、渋谷寛、小川了、福田努、西村秋哉、松本拓也 他 OPERA Collaboration: ニュートリノ振動実験OPERA実験における大角度飛跡解析.  日本物理学会 2015年秋季大会,  大阪市立大学杉本キャンパス(大阪市),  2015/09
19. ◎石黒勝己、渋谷寛、小川了、福田努、松尾友和、西村秋哉、松本拓也 他 OPERA Collaboration: ニュートリノ振動実験OPERA実験における崩壊事象探索.  日本物理学会 2015年秋季大会,  大阪市立大学杉本キャンパス(大阪市),  2015/09
  :Corresponding Author
  :本学研究者