東邦大学 教育・研究業績データベース   
   TOPページ   


<<< 前 2012年度 | 2013年度 | 2014年度
 医学部 医学科 生化学講座
 Department of Biochemistry

教授:
  中野 裕康
講師:
  土屋 勇一
  三宅 早苗
■ 概要
最新の研究から細胞死や細胞死に伴い放出される因子が生体の恒常性維持に関与するという新たなパラダイムが形
成されつつある。この新たなパラダイムを検証・発展させるために、本年度は以下の2点について研究を行った。
1. cFLIPによる生体の恒常性維持機構の解析
皮膚の恒常性維持におけるcFLIPの役割を検討するために表皮特異的cFLIP欠損(cFLIPΔEpi)マウスを作製した。cFLIPΔEpiマウスはケラチノサイトのアポトーシスが出生前に亢進し胎生致死となることが明らかとなった。表皮においてTNFαの発現が亢進していたことから、ケラチノサイトの細胞死亢進の原因がTNFα依存性であるかを検討するためにTNFR1欠損マウスと交配したところ胎生致死の表現型が解消された。cFLIPΔEpi; TNFR1二重欠損マウスはメンデルの法則に従って出生してきたものの、出生後4〜5日目から皮膚炎が出現し、最終的には7〜10日目には全個体が致死となることが明らかとなった。このことからcFLIP欠損表皮細胞で認められる細胞死は、出生前はTNFR1依存性であり、出生後はTNFR1非依存性であることが初めて明らかとなった。出生後5日目の組織学的検索では表皮細胞の初期分化マーカーであるケラチン5やケラチン14の発現はcFLIPΔEpiマウスでも正常に検出されたが、後期分化マーカーであるロリクリンの発現は消失していた。以上よりcFLIPの欠損により細胞死の亢進した表皮では分化障害も誘導されていることが明らかとなった。
2. 計画的ネクローシスにより誘導される生体応答の解析
我々は昨年度までの研究により細胞死制御に関与するcFLIPsとよばれる遺伝子をX染色体に選択的に導入した遺伝子改変(cFLIPs KI)マウスを作製した。そのマウスの解析により死んだ腸上皮細胞から増殖因子が放出され、周辺の生細胞に増殖を誘導(代償性増殖)している可能性を見出した。そこで本年度はその因子を同定するために胎生期の腸管を用いてゲノムワイドなトランスクリプトーム解析を行い検討した。マイクロアレイを用いて検討したところ組織修復に関与するRegIIIb やRegIIIg遺伝子を含む多数の遺伝子の発現がcFLIPs KIマウス由来の腸管では上昇していた。なかでもRegIIIb やRegIIIg遺伝子は出生直後には成長に伴い野生型マウスでも著明な誘導がかかるが、出生前には野生型マウスでの発現誘導は認められず、出生後の誘導のメカニズムと出生前の細胞死に伴う誘導のメカニズムは異なっている可能性が明らかとなった。cFLIPs KIマウスとRIPK3欠損マウスと交配することにより、腸管上皮細胞のアポトーシスは抑制され、RegIIIbやRegIIIgの発現も低下することが明らかとなった。この事は傷害を受けた上皮細胞から、あるいは傷害を受けた上皮細胞に応答した周辺細胞でRegIIIbやRegIIIgの発現が誘導されることを示している。さらにこれらの分子に対する抗体を用いて免疫染色を行ったところ、KIマウスの腸管上皮細胞で発現し、消化管内腔にも分泌されていることが明らかとなり、その程度は腸管上皮細胞の傷害の程度と相関している可能性が示された。
3. 死細胞から放出されることを同定しているIL-11の解析
腸炎時におけるIL-11の具体的な役割を明らかにする目的で、潰瘍性大腸炎モデルの一つであるデキストラン硫酸誘発性腸炎モデルを、IL-11の機能欠損マウスであるIL-11受容体欠損マウスを用いて作出し、解析を行った。その結果、対照群と比較して、IL-11受容体欠損マウスにおいては生存率の低下、病変部位における炎症系サイトカインの産生量や免疫細胞浸潤の亢進がみられた。また、IL-11の標的細胞の同定を目的に骨髄キメラマウスを作製し解析を行った結果、IL-11は非骨髄由来の細胞に作用することで、病態の増悪に抵抗性を示していることが明らかとなった。加えて、粘膜炎症時のIL-11産生制御機構を明らかにするために、我々が新たに樹立したIL-11レポーターマウスを使用して、生体でのIL-11産生細胞の検出を試みた。その結果、腸炎誘導に伴いIL-11産生細胞は、粘膜上皮が脱落した炎症部位に特異的に集積しており、産生細胞における各細胞特異的分化マーカー分子を解析したところ、産生細胞は非骨髄由来の細胞であることを明らかとした。
■ Keywords
アポトーシス, ユビキチン(ubiquitin), Gene-trap, cFLIP, IL-11, 免疫染色, IL-11のGFPレポータ ーマウス
■ 当該年度の研究費受入状況
1.  平成26年度文部科学省科学研究費 基盤研究(B)  (研究課題番号:24390100)
 研究課題:細胞死による炎症制御機構の基盤的研究  (研究代表者:中野 裕康)
 研究補助金:4200000円  (代表)
2.  平成26年度文部科学省科学研究費 挑戦的萌芽研究  (研究課題番号:25670167)
 研究課題:モザイク状細胞死誘導マウスを用いた代償性増殖機構の解明  (研究代表者:中野 裕康)
 研究補助金:1500000円  (代表)
3.  平成26年度文部科学省科学研究費 新学術領域研究  (研究課題番号:26110003A01)
 研究課題:計画的ネクローシスが担う生体応答機構の解明  (研究代表者:中野 裕康)
 研究補助金:20100000円  (代表)
その他
1.  平成26年度武田科学振興財団
 研究課題:死細胞応答マクロファージ制御による臓器虚血の克服  (研究分担者:中野 裕康)
 研究補助金:9000000円  (分担)
2.  平成26年度上原科学振興財団
 研究課題:肝細胞死亢進マウスを用いた肝幹細胞増殖因子の同定  (研究代表者:中野 裕康)
 研究補助金:5000000円  (代表)
3.  平成26年度内藤科学振興財団
 研究課題:慢性炎症発症における計画的ネクローシスの役割の解明  (研究代表者:中野 裕康)
 研究補助金:3000000円  (代表)
4.  平成26年度医学部医学科プロジェクト研究費
 研究課題:c-FLIP結合タンパク質の同定と機能的役割の解析  (研究代表者:土屋 勇一)
 研究補助金:500000円  (代表)
5.  平成26年度東邦大学医学部医学科プロジェクト研究
 研究課題:T細胞に特徴的に発現する遺伝子による免疫学的恒常性維持に関する研究  (研究分担者:出口 裕)
 研究補助金:500000円  (分担)
6.  平成26年度東邦大学医学部医学科プロジェクト研究
 研究課題:Gene-trap法を用いたネクロプトーシス実行遺伝子の同定  (研究代表者:中林 修)
 研究補助金:220000円  (代表)
■ 当該年度研究業績数一覧表
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表
和文英文 和文英文 国内国際
















中野 裕康   教授
    2          4
(4)
 2
 
 
 
 
三宅 早苗   講師
理学博士
              
 1
 
 
 
 
土屋 勇一   講師
              
 
 
 
 
 
出口 裕   助教
薬学博士
              
 
 
 
 
 
村井 晋   助教
理学博士
              
 
 
 
 
 
中林 修   助教
農学博士
              1
 
 
 
 
 
 0 0  0 0  0  5
(4)
 0
(0)
 0
(0)
(  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会
■ 刊行論文
原著
1. Doe, K., K. Nozawa, K. Hiruma, Y. Yamada, Y. Matsuki, S. Nakano, M. Ogasawara, H. Nakano, T. Ikeda, T. Ikegami, M. Fujishiro, M. Kawasaki, K. Ikeda, H. Amano, S. Morimoto, H. Ogawa, K. Takamori, I. Sekigawa, Y. Takasaki.:  Antibody against chromatin assembly factor-1 is a novel autoantibody specifically recognized in systemic lupus erythematosus.  Lupus  23 (10) :1031 -1041 , 2014
2. Nagashima H. Okuyama Y. Asao A. Kawabe T. Yamaki S. Nakano H. Croft M. Ishii N. So T.:  The adaptor TRAF5 limits the differentiation of inflammatory CD4(+) T cells by antagonizing signaling via the receptor for IL-6.  Nature immunology  15 (5) :449 -456 , 2014
■ 学会発表
国内学会
1. ◎中野裕康: cFLIPによる細胞死と炎症の制御.  第87回日本生化学会,  京都,  2014/10
2. ◎進藤綾大、駒澤幸子、小池正人、内山安男、大村谷昌樹、中野裕康: X染色体の不活性化を利用したcFLIPsトランスジェニックマウスの樹立.  第87回日本生化学会大会,  京都,  2014/10
3. ◎仁科隆史、大塚正人、中村衣里、多田昇弘、中野裕康: IL-11を介した腸管の恒常性維持機構の解明.  第87回日本生化学会大会,  京都,  2014/10
4. ◎中野裕康: cFLIPによる生と死の運命決定機構.  第67回日本酸化ストレス学会,  京都,  2014/09
5. ◎中野裕康: 皮膚の恒常性維持におけるcFLIPの役割.  第23回日本Cell Death学会,  東京,  2014/07
6. ◎中林修, 三宅早苗: SPB構成因子Cdc31のDNA複製開始における制御機構の解析.  第144回東邦医学会例会,  東京,  2014/06
その他
1. ◎中野裕康: 計画的ネクローシスの担う生体応答機構の解明.  新学術領域「ダイイングコード」キックオフシンポジウム,  東京,  2014/11
  :Corresponding Author
  :本学研究者